
2015年3月3日・中潮
関西で朝日新聞を購読されている方に
毎月配られるカレンダー裏面の連載コラム
「美ら海のなかまたち」の第14回は、アザハタです。
座間味の海で少なくとも20年以上観察されてきたアザハタの根のお話です。
どこまでも白く広がる海底の砂地にぽつんと存在し、
多種多様な生きものたちが一緒に暮らす美しい根で、
ピンクやオレンジのハナダイの仲間たちが舞い、
その周りを無数の透明な小魚の群れが取り囲み、
岩の間では、金色の小魚も渦巻き、
カラフルなエビやカニ、ホヤやウミウシたちがひっそりと暮らしている。
アザハタはその中で王様のように君臨する大きな赤い魚です。
根の中心で我が物顔でくつろぎ、
ホンソメワケベラやエビたちに体を掃除してもらったり、
お腹がすけば、根に住む小さな魚たちを食べ、
一見、好き勝手に生きているように見えます。
でも実は、その根を存続するのに重要な役割を担っているのです。
大きな回遊魚が根の小魚を食べにくると猛然と追い払い、
エビが大好物のタコが住み着こうとすると追い返し、
サンゴや岩に砂がかぶると、ヒレで丁寧に払い落として掃除をし、
みんなの暮らしを守るため、『一所懸命』働いています。
大きな魚も小さな魚も、エビもカニもいろんな種が、
それぞれの立場で自分の役割を担い、
絶妙なバランスが保たれて、
この小さくとも美しい世界が成り立っているのです。
そのアザハタのペアが、ある日突然、2匹ともに姿を消してしまいました。
釣られてしまったのか突かれてしまったのか、真相は謎です。
ただ、
あんなにもたくさんのいろんな生きものたちでにぎわっていた根は、
見る見るうちに荒廃し、
今ではほとんど誰もいない寂しい根となってしまいました。
今さらながら、たった2匹の存在の大切さを思い知らされるのです。
それからしばらく見に行っていませんが、
また、命あふれる根に戻っていることを願って、
新しい命が湧く暖かい季節に訪ねてみようと思っています。
最近のコメント